アレルギー疾患とは
アレルギーによる皮膚疾患は、本来は体を守るはずの免疫が、特定の刺激(アレルゲン)に対して過剰に反応してしまうことで起こります。
花粉やダニ、食べ物、金属、薬剤などが体内に入ったり皮膚に触れたりすると、免疫が「異物」と判断し、ヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質が放出されます。
その結果、かゆみ・赤み・腫れ・湿疹といった症状が現れます。
アレルギーが起こる背景には、体質(遺伝的な要因)に加え、皮膚のバリア機能の低下、乾燥、生活環境(ダニ・ほこり)、ストレス、睡眠不足、感染症など、複数の要因が重なることが少なくありません。
原因が一つではないからこそ、症状の出方を丁寧に見極め、必要に応じて検査や治療を組み合わせることが、改善への近道になります。
アレルゲン(原因となる物質)の例
- 花粉(スギ・ヒノキなど)
- ダニ・ハウスダスト
- 動物の毛やフケ
- カビ
- 食物(卵・乳・小麦・甲殻類など)
- 金属(ニッケルなど)
- ゴムや樹脂
- 化粧品・外用薬の成分
- 薬剤(抗菌薬・解熱鎮痛薬など)
アレルギーの検査
花粉症
花粉症は、花粉をアレルゲンとするアレルギー性鼻炎・結膜炎で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが主な症状です。
皮膚科の領域でも、目のまわりや顔のかゆみ・赤み、乾燥、こすれによる湿疹(いわゆる花粉皮膚炎)のご相談が少なくありません。
季節性の不調を「毎年のこと」と我慢せず、症状に合わせた対策を早めに始めることが大切です。
花粉症の原因
日本では、春のスギ・ヒノキが代表的で、スギは主に2〜3月頃、ヒノキは3〜4月頃に増えやすいとされています。
さらに初夏にはイネ科、秋にはブタクサやヨモギなど草本の花粉が原因になることもあり、症状の時期から原因花粉を推定する手がかりになります。
花粉症の症状
くしゃみ、さらさらした鼻水、鼻づまり、目のかゆみ・充血・涙が中心ですが、のどの違和感、咳、頭重感、集中力低下、睡眠の質の低下など、生活全体に影響が出ることもあります。
皮膚症状としては、目の周りや頬のかゆみ・赤み・乾燥が目立ち、こすることで悪化しやすくなります。
花粉症の主な治療法、予防法
治療の基本は、症状を和らげる対症療法と、体質改善を目指す治療を組み合わせる考え方です。
対症療法では、抗ヒスタミン薬などの内服、点鼻薬、点眼薬を用いて症状を抑えます。
体質改善を目指す治療としては、原因が明確な場合にアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)が選択肢となり、長期的に症状を軽くする効果が期待されます。
予防としては、花粉の多い時期はマスク・メガネの着用、帰宅時の花粉除去(衣類を払う・洗顔・洗髪)、換気方法の工夫、寝具や室内の清掃などが有効です。
皮膚は乾燥していると刺激を受けやすいため、保湿も大切です。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹を繰り返す慢性的な皮膚炎です。
皮膚のバリア機能の弱さ(乾燥・刺激に弱い)と、アレルギー反応を起こしやすい体質が関与し、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。
適切な治療を続けて「炎症のない状態を保つ」ことが、再燃を防ぐ鍵になります。
アトピー性皮膚炎の症状
強いかゆみ、赤み、ぶつぶつ、じゅくじゅく、皮むけ、かさつきなどが起こり、掻くことでさらに悪化しやすくなります。
慢性化すると皮膚が厚く硬くなったり、色素沈着が残ったりすることもあります。
部位は年齢により変化し、乳幼児では顔や体幹、小児では肘や膝の内側、思春期以降では首・顔・上半身などに出やすい傾向があります。
アトピー性皮膚炎の検査
アトピー性皮膚炎の診断は主に症状と皮膚所見で行いますが、病勢(今どれくらい炎症が強いか)や治療反応を把握する目的で血液検査を行うことがあります。
代表的な指標として血清TARCがあり、病勢を反映しやすいマーカーとして保険適用で測定されます。
さらに小児(15歳以下)では血清SCCA2も病勢評価の指標として用いられ、TARCと同様に重症度の把握に役立ちます。
また、IgEや好酸球、LDHなどを併せて評価し、アレルギー体質の傾向や炎症の程度、合併症の可能性を確認することもあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療は、①スキンケア ②薬物療法 ③悪化要因対策の三本柱が基本となります。
完全寛解を目指すというよりも症状をコントロールすることによって、できるだけ悪化した症状にならないようにすると言ったほうが正しいかもしれません。
スキンケア
毎日の保湿でバリア機能を整え、刺激を受けにくい皮膚状態を作ります。
洗い方(こすりすぎない、低刺激の洗浄)や入浴後の保湿のタイミングも重要です。
薬物療法
外用薬は炎症を抑える基本で、症状の強さや部位に応じて使用していきます。
ステロイド外用薬が基本で、場合によってはプロトピック軟膏(タクロリムス水和物軟膏/2歳以上)も使用していきます。
近年は、炎症経路に作用する新しい外用薬として、コレクチム軟膏(ヤヌスキナーゼ[JAK]阻害薬/生後6か月以上)や、モイゼルト軟膏(ホスホジエステラーゼ4[PDE4]阻害薬/生後6か月以上)も選択肢になり、肌質や部位によって調整します。
内服薬は、かゆみや炎症が強い場合に補助的に用い、抗ヒスタミン薬などで掻破(掻き壊し)を減らすことが治癒を助けます。
重症例では、経口ヤヌスキナーゼ[JAK]阻害薬を検討することもあります。
薬剤の種類としては、リンヴォック(12歳以上)、サイバインコ(12歳以上)、オルミエント(2歳以上)があり、高い効果が期待できます。
注射薬(生物学的製剤など)は、中等症〜重症で外用中心の治療だけでは十分にコントロールできない場合に検討し、炎症を引き起こす免疫の流れを標的として改善を目指します。
注射薬の種類としては、以下のようなものがあります。
- デュピクセント(ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体) 皮下注射(生後6か月以上)
- ミチーガ (ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体) 皮下注射
- アドトラーザ(ヒト抗ヒトIL-13モノクローナル抗体) 皮下注射
- イブグリース 皮下注射
このうちデュピクセントは、2週間に1回皮下に注射する必要がありますが、自分で注射することができます。
従って、注射のたびに毎回来院する必要がなく、薬局で何回分かまとめて受け取ることができます。
悪化要因対策
ダニ・ほこり・汗・乾燥・摩擦・ストレス・睡眠不足、季節変化、感染症、合わないスキンケアなど、悪化の引き金は人により異なります。
生活背景を伺いながら「何が悪化につながっているか」を整理し、現実的に続けられる対策を一緒に考えます。
光線療法について
外用治療だけで十分に落ち着きにくい場合、紫外線治を組み合わせることで、皮膚の過剰な免疫反応を調整し、炎症を抑える効果が期待できます。
通院頻度や皮膚の反応を見ながら照射量を調整し、安全性に配慮して行います。
牛肉・豚肉アレルギーとマダニ刺傷
牛肉・豚肉など赤身肉でアレルギー症状が出るタイプの中に、α-Gal(アルファ・ガル)という糖鎖に対するアレルギーが関与する「α-Gal症候群」があります。
特徴として、食後すぐではなく数時間たってから、じんましんやかゆみ、腹痛、呼吸苦などが出ることがあり、原因に気づきにくい場合があります。
牛肉・豚肉アレルギー(α-Gal症候群)が起こる仕組み
α-Galは、哺乳類(ヒト以外)に含まれる糖鎖の一つです。
体内にα-Galに対するIgE抗体ができると、牛肉・豚肉などを食べた後に免疫が過剰反応し、アレルギー症状が起こります。
症状が遅れて出やすいのは、食事由来の成分が体内に吸収され、反応が起きるまでに時間がかかるためと考えられています。
牛肉・豚肉アレルギーとマダニ刺傷の関係について
α-Gal症候群は、マダニ刺傷がきっかけになってα-Galに対するIgE抗体が作られ、その後に赤身肉でアレルギー反応が起こるようになる、という経路が知られています。
野外活動が多い方や、ダニに刺された既往がある方では、症状の経過と合わせて評価することが重要です。
なお、屋内に生息するイエダニ、コナダニは原因になりません。
抗がん剤セツキシマブとの関係について
抗がん剤のセツキシマブは、製剤の構造にα-Galが含まれる部分があり、α-Galに対するIgE抗体を持っている方では、投与時に強いアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こす原因になり得ることが報告されています。
牛肉・豚肉アレルギー(α-Gal症候群)の検査、治療、予防について
検査では、症状の出方(何を食べて、何時間後に、どのような症状が出たか)を詳しく確認したうえで、血液検査でα-Galに対する特異的IgE抗体を調べることがあります。
治療の基本は原因食材の回避と、症状が出たときの対応です。
重い反応が疑われる場合は、緊急時対応も含めて医療機関で方針を整理します。
予防としては、野外でのダニ対策(長袖・長ズボン、虫よけ、帰宅後の入浴・チェック、草むらでの注意)が重要です。
そのほかの牛肉・豚肉アレルギー
牛肉・豚肉アレルギーには、ほかに、原発性牛肉アレルギー(Bos d 6)と、Pork-cat症候群(Fel d 2)があります。
原発性牛肉アレルギー
牛肉そのものに含まれるタンパク質に対するアレルギーで、代表的な原因分子がウシ血清アルブミン(Bos d 6)です。
一般的な食物アレルギーと同様に、牛肉を食べて比較的早いタイミングで、蕁麻疹、口の違和感、咳、腹痛などの症状が出ることがあります。
血清アルブミンは熱に弱い性質があるため、よく加熱した肉では症状が出にくくなる場合もありますが、個人差があるため自己判断での摂取は避け、医師と相談して対応を決めることが大切です。
牛乳アレルギーやアトピー体質と関連することもあり、体質や既往歴が診断の手がかりになります。
Pork-cat症候群
ネコのフケや被毛などに含まれるネコ血清アルブミン(Fel d 2)に、吸入を通じて感作(アレルギー体質が形成)され、そのIgE抗体が構造の似た豚の血清アルブミン(Sus s 1)などに交差反応することで、豚肉を食べた後にアレルギー症状が出るタイプです。
ネコアレルギー(鼻炎・喘息・皮膚症状など)が背景にあることが多く、食後早い段階で蕁麻疹や血管浮腫、ときに強い全身症状が起こることもあります。
こちらも血清アルブミンが関与するため、加熱で反応性が下がる場合がありますが、加熱しても症状が出る例もあり、慎重な対応が必要になります。